クトゥルフの呼び鈴

CALL BELL of CTHULHU

SAN値が減るとか削れるとかが実感できる:チャールズ・ウォードの奇怪な事件

クトゥルフ神話TRPGの特徴であり、代名詞のように言われている「SAN値」(今は正気度と言うようですが、一般的にこの言い方が有名ですよね)これがよくわからん、というか、実感できないな〜とルールブックを読みながら思っていました。ちなみに一般的な解説は、以下のURLなんかが分かりやすいです。

 


でも言葉の解説じゃなくて、まさにSAN値が下がる、しかもかなりヤバいくらいまで一気に下がるのが、ひしひしと実感できるのがラヴクラフト全集2巻に収録されている「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」のあるワンシーンです。僕はこれを読んでいて、もう本当に戦慄しましたよ。

 

ちょっとネタバレになりますが、本作のヒーローであるウィレット医師が、広大な地下空間を探求中に、ずっと聞こえ続けている啼き声の正体がなんであるかを知ってしまい、見てしまった瞬間の描写、SAN値がゴリゴリっと下がるという実例として、これほどに似つかわしい場面はなかなかないんじゃないでしょうか。ホラー作品としてもこの地下の冒険のシーンは出色の出来です。他の部分は結構読みにくく、かなりくどい描写も多いのですが。

 

(嘘か本当かは知らないのですが)指輪物語の『旅の仲間』、モリヤの鉱山の奥深くでパーティがバルログと対決するシーン、ガンダルフが「ここは断じて通さん!」って杖で橋を撃ち壊して、バルログと共に奈落の底に落ちていくあの名シーン、あれをゲーム上で再現したくてD&Dが生まれたという話を聞いたことがあります。クトゥルフ神話TRPGもひょっとして、この作品を再現したくて生まれたんじゃないかななんて想像したりすると楽しいです。それくらいにこの『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』はエンタメ色が強く、上述のシーン以外にもゲームの1シーンのようなドラマティックな箇所が散りばめられています。未読の方はぜひ読んでみてください。訳者は違いますが『チャールズ・デクスター・ウォードの事件』というタイトルで、青空文庫にも収録されています。(無料!)